平年値とは?気象庁の定義と具体的な計算方法を説明
2021年5月19日から平年値が更新されます。
平年値ニュースでよく聞く言葉ですね。
「今日は平年値に比べて〇度高く予想です」
というフレーズ、耳なじみがありますよね。
気温に限ったことではなく雨や雪、日照時間といった気象庁の観測しているデータには平年値というものがあります。
平年値とは?平均とは違うの?
イメージで言えばだいたい同じです。
5月の平均値気温と言えば、5月の平年値を指すこともあります。
ただ、平均値といってもなるべくみんなが感じてる平均的なデータとしたい!
という意図からこれまでの全てのデータは使わないで30年間の平年値データを使っています。
しかも、毎年更新すると、情報更新という煩雑な作業を気象庁だけではなくそれを使用する全体に強いることになるため(最近ではそう煩雑ではない仕組みもできそうですが)平年値は10年ごとに更新すると決めています。
もちろん、10年ごとと言われたら、「2010年までの30年」とか「2020年までの30年」とか区切りよくしますよね?
そう、ルールはたった2つ。
- 平均値は30年間。
- 期間は10年ごと。
これだけです。
図で表すと
なぜ平年値は30年間の平年?
答えかたはいろいろありますが、直接的な答えをすれば「気象庁の統計指針でそう決めたから」となります。
記載の内容ですが
累年の統計は、複数年にわたる期間について行う。
累年の統計の主なものとして、西暦年の 1 位が 1 の年から数えて 30 年間の値を平均して求める平年値
とあります。
この気象庁の統計指針はWMO(世界気象機関)の決めたルールに基づいているのでWMOの決定とも言えるでしょう。
しかし、それでは答えは味気ないですね。
30年を統計期間とするのは、気候の変動が理由と言えるでしょう。
気温で言えば地球の温暖化が有名ですね。
IPCC第5次評価報告書では、世界平均気温は1880年から2012年という33年間で0.85℃上昇しています。気温が上がり続けているのであれば、過去の観測データを使うほど、平均値は下がってしまいます。それでは、最近の肌感覚と離れてしまいます。
では、期間を短くすると良いのでは?と思うかもしれませんが、あまりにも期間が短ければ、1年の異常気象があった場合に、その1年に大きく左右されています。
データを多くしつつ、あまりにも過去のデータを使用しない・・・という兼ね合いでちょうどいい所をとったのが30年だったという話です。
この30年(3の倍数)というのが実は都合よくなります。
気温を「高い」「平年並」「低い」という3段階に分けることは知ってますか?ニュースで「暖冬」とか「冷夏」とか言ったりしますが、キチンと基準があるのです。
30年のうちに上位の10年が「高い」下位の10年が「低い」、という基準があるのです。
気温で言えば「高い」や「低い」、降水量で言えば「多い」や「少ない」という区分を階級区分 といいますが、階級を3段階にわけるのに30年という期間はちょうど良いのです。
階級区分についても、気象庁では統計指針で細かく定義しています。
実際に見てみると、「高い」や「低い」が33.3%となっているのが分かります。30年の33.3%だと、ちょうど10年ですね。
また、「かなり高い」や「かなり低い」という言葉も上位・下位の10%と定義されています。
細かいですね。
30年の10%なので、3年ですね。
例えば2020年の仙台の平均気温を例に出すと、17.8℃でした。
これは、新しい平年値(2020年までの30年間)では、高い方から4位の記録となります。3位の高さの気温なら「かなり高い」と言えますが、4位なので「かなり高い」とは言えません。しかし、10位以内なので「高い」ということはできますね。
そういった階級区分の上位10%や上位1/3が計算しやすいという事情もありつつ30年というのが平年値の期間となっています。
平年値の計算をしてみる
では、具体的に平年値の計算をしてみましょう。
どの地点でも良いのですが、仙台を例にしてみましょう。
でも同じではありますが、
5月の平均気温を考えてみましょう。
1991年からの5月の平均気温をまとめてみます。
1991 | 1992 | 1993 | 1994 | 1995 | 1996 | 1997 | 1998 | 1999 | 2000 |
15.6 | 13.3 | 14.4 | 15.5 | 15.6 | 13.9 | 15.0 | 16.5 | 16.5 | 15.9 |
2001 | 2002 | 2003 | 2004 | 2005 | 2006 | 2007 | 2008 | 2009 | 2010 |
15.4 | 14.6 | 14.6 | 15.3 | 13.4 | 15.2 | 15.4 | 14.8 | 16.5 | 14.7 |
2011 | 2012 | 2013 | 2014 | 2015 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 |
15.6 | 15.9 | 14.4 | 16.5 | 18.0 | 17.0 | 17.0 | 17.0 | 17.4 | 16.8 |
素っ気ない表ですが、これが年ごと5月の平均気温です。
これを平均すれば2020年平年値(5月の平均気温)となります。
平均してみると、15.59℃となりますが四捨五入して15.6℃ですね。
単純ですよね?
ちなみに、上位3位の記録が17℃となっているので、「かなり高い」の閾値は17℃。それを上回ると「かなり高い」と言えることになります。
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