雨雲レーダーには間違いが多い?噓の雨雲とレーダーに写らない雨

雨雲レーダーは見たことがありますか?

今、どこでも雨が降っているのか、一番正確に教えてくれるのは雨雲レーダーです。アメダスによる雨量観測や、Yahoo天気・ウェザーニューズの会員レポートでも天気はある程度分かりますが、一番正確に雨の様子が分かるのは雨雲レーダーです。

しかし、雨雲レーダーにも意外と間違った観測は多くあります

毎日見ていると「あれ?レーダーに移っているけど雨が降っていない・・・」なんてことも多々あります。

そんな雨雲レーダーの秘密に迫っていきましょう。

雨雲レーダーの仕組みは?

間違った観測が発生する理由を説明するために、簡単に雨雲レーダー(気象レーダー)の観測の仕組みを見てみましょう。

2重偏波レーダーの仕組み

気象庁の雨雲レーダー(最新の2重偏波レーダー)の観測の仕組みに掲載されていますが、最新の雨雲レーダーは主に3種類の要素から雨の強さを測定しています。

  1. 縦方向の波を送り、どれぐらい波がずれて返ってくるか(位相変化)
  2. 横方向の波を送り、どれぐらい波がずれて返ってくるか(位相変化)
  3. レーダーが発射した電磁波のうち、どれぐらいの電磁波が返ってくるか

位相とは、少し専門的な書き方もしていますが、波の山と谷のことです。レーダーは電磁波を放出して受信する装置です。電磁波は文字通り、電気と磁気の波なので大と谷があります。その山の部分が返ってくるタイミングで谷の部分が返ってくると位相差が大きい・・・というのが物理の時間に学習する内容ですが、細かい話は置いておきましょう。

その、縦方向と横方向波の変化の具合によって雨粒の形状形状が分かります。もっと具体的に言えば、雨粒の大きさが分かります!

そう、大きい粒なら雨が強く、小さい粒なら弱い雨ということです。

基本的に強い雨なら1と2の縦方向と横方向の波からわかる雨粒の大きさで雨の強さが分かるのですが、10㎜程度までの弱い雨なら、昔(といっても20~30年とかそれぐらいでしょうが)から行っている「レーダーが発射した電磁波のうち、どれぐらいの電磁波が返ってくるか」という手法を使った方が精度が良くなるから未だに3の方法も行っています。

参考文献:帯二重偏波レーダにおける比偏波間位相差を用いた降雨強度推定

紹介したのは、概要なので3つの要素だけお伝えしましたが、2重偏波レーダーはマルチパラメターレーダと呼ばれ様々な要素を観測しています。組み合わせ方によっては、雪や氷の粒の大きさもわかるので降水現象の種類によらずに正確な観測が可能となっています。

雨雲レーダーの間違い?弱点とは?

仕組みの所で最新のすごい技術をお話しましたが、案外、雨雲レーダーには弱点が多くありあます。そして、雨雲レーダーを運用している気象庁や国土交通省が公に認めています。雨雲レーダーはその観測方法の特性上、必ず誤ったデータが含まれるからです。

なにを開き直っているんだ!

と怒られそうですが、完璧な雨雲の観測は技術的に不可能なので仕方がありません。

では、少し体表的な誤った雨雲の観測を見てみましょう。

上空性エコー

この絵を見て分かると思いますが、レーダーは雲の中の雨雲を観測しています。言い換えると高い所の雨雲を見ています。その雨雲が地上まで達すればよいのですが、上昇流に打ち勝つほどの雨粒ではない場合、地上まで落ちてきません。また、雨雲が高い所にあっても、その下が乾燥している場合は雨が蒸発して地上まで落ちてこないこともあります。

上空では雨粒があっても地上に落ちてこない雨粒。それが一つ目の弱点です。

レーダーが上を向いている以上、この弱点は仕方ないですよね?

異常伝搬

これは、気象レーダーが出している電磁波が何かの影響(主に逆転層と呼ばれる空気密度の違い)によって曲がってしまい、地面や海など思ってもいない方向を観測してしまった場合に写る雨雲のことです。

雨雲レーダーは横方向を観測しているつもりでも、電磁波が途中から下に向かっていた・・・。ということが原因となる訳です。

これは電磁波を使っている以上避けれれません。