山の天気の調べ方|山頂の寒さと風は「700hPa(約3000m)」で見る。百名山の2週間の計算と気象庁の予報の使い分け
天気予報を見たら「晴れ、最高気温18℃」。これなら大丈夫と山へ向かったのに、稜線に出たとたん、顔が痛くなるほどの冷たい風。手がかじかんで、地図をめくるのもやっと。山を歩く人なら、ふもとの天気予報と山の上の天気がまるで違う、という経験が一度はあるのではないでしょうか。
ふだん見ている天気予報は、人が暮らしている平地の予報です。山の上の天気を知るには、もう一つの見方、「上空の面」の気温と風を見るのが近道です。天気図で使う 850hPa・700hPa・500hPa という面は、それぞれ高さが約1500m・約3000m・約5500m。日本の高い山の頂は、ちょうどこの間にあります。
この記事で分かることは、次の4つです。
- なぜ、ふもとの予報だけでは山の天気が分からないのか
- 850hPa・700hPa・500hPa と、山の高さの関係
- 2週間前から当日まで、山の天気を順に調べる方法
- 登る前に、これだけは確かめてほしいこと
先にお伝えすると、当サイトでは、日本百名山の100座について、気象庁の予報と、上空の気温・風の計算を2週間先まで1ページにまとめた山の天気のページを作りました。この記事では、その使い方をくわしく紹介します。
ふもとは雨で12℃、3000mは −11℃
まず、実際の例を見てみましょう。2026年11月6日の昼に見た、立山(富山県)のページです。
上の表は、気象庁の富山県東部の3時間ごとの予報です。明日11月7日(土)は一日雨で、気温(富山の予報)は10〜12℃。冷たい雨ですが、平地ならまだ「秋の雨」です。下の表は、立山町の時系列情報(明日までの警報等の見通し)で、雷(突風を伴う)がレベル2(注意報級)の時間帯が続いています。
では、同じ日の上空はどうでしょう。
ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)の計算では、11月7日の700hPa(約3000m)の気温は −9〜−11℃、西寄りの風が15〜21m/s です。ふもとの富山は雨で12℃でも、3000m級の稜線の高さでは、真冬の寒さと強い風になる計算です。ふもとで雨なら、上では雪かもしれません。
気温は、平均すると100m高くなるごとに約0.6℃下がると言われます(いつもその通りになるわけではありません)。3000m上がれば、それだけで約18℃。これが、ふもとの予報だけでは山の天気が分からない理由です。
山の高さと「上空の面」
天気図には、地上の天気図のほかに、上空の天気図があります。上空の天気図は、高さではなく気圧で面を決めて描いています。
- 850hPa(約1500m):雪か雨かの目安や、寒気の強さを見るのによく使われる面です。冬の天気予報で「上空1500mに −6℃以下の寒気」と言うのは、この面のことです。
- 700hPa(約3000m):北アルプスや富士山の高さに近い面です。3000m級の山の稜線の寒さと風を考えるときの手がかりになります。
- 500hPa(約5500m):日本の山よりずっと上ですが、上空の寒気や気圧の谷を見る面です。ここに強い寒気が入ると、大気が不安定になり、山で雷や急な天気の崩れが起きやすくなります。
面の高さは日によって変わり、寒気の中では低くなります。また、山があるところでは、その山が風をさえぎったり持ち上げたりするので、面の数字はそのまま山頂の値ではありません。それでも、「その高さの空気が、どれくらい冷たく、どれくらい強く流れているか」を知るには、とても役に立つ数字です。上空の天気図の見方は、こちらの記事にもまとめています。
百名山100座の「山の天気」の見方
一覧で、今度の週末の山をくらべる
山の天気の入口のページは、地域ごとの百名山の一覧です。
それぞれの山に、次の土曜日などの、山にいちばん近い格子の計算を並べています。700hPa の最高・最低気温、700hPa の日中のいちばん強い風、1日の降水量です。この日(11月7日)の北海道は、大雪山の近くの格子で700hPa が −19〜−22℃、風は最大37m/s という計算。もう完全に冬の山です。風の欄の色が赤いほど強い風です。
山のページの上:この先の土日の計算と、気象庁の予報
山の名前を押すと、その山のページが開きます。立山ならこちらです。
いちばん上には、「この先の土日・祝日の計算」を文で出しています。週末に登る人が、まず知りたいことだからです。その下に、先ほどの気象庁の3時間ごとの予報と、時系列情報(明日までの警報等の見通し)が続きます。気象庁の予報は、山のある地域の発表をそのまま載せています。山頂の予報ではありませんが、雨や雷、強い風の見通しは、まず気象庁の発表で確かめるのが基本です。
2週間のカレンダー:雨と寒さと風の「波」を見る
カレンダーの上の段は、気象庁の週間予報(県の地域ごとの発表)の天気と降水確率です。その下の行は、ECMWF(ヨーロッパの旗)と GFS(アメリカの旗)の計算で、上から1日の降水量、700hPa の最低気温、そして700hPa の日中のいちばん強い風(ECMWF だけ)です。風の札は、10・15・20・25m/s の段で色が濃くなります。
このカレンダーで見てほしいのは、寒さと風の波です。立山の例では、11/7〜11/11 は700hPa の最低気温が −4〜−11℃、風は16〜21m/s の日が続き、11/12 には −2℃・7m/s と、いったん落ち着く計算です。その先の 11/19 は風が30m/s という計算も出ています。2週間先の計算は外れることも多いのですが、「この週は寒気が続きそう」「この日は風が落ち着きそう」という流れをつかむのには役立ちます。2つのモデルが同じような数字を出している日は、少し信頼してもいい日です。
降水量は、雨と雪を分けていません。雪も、とけた水の量で数えています。700hPa が氷点下の日の降水は、高いところでは雪かもしれない、と考えてください。
3時間ごとの上空の気温と風、日ごとの表
カレンダーの下には、先ほど見た3時間ごとの上空の気温と風の表(850hPa・700hPa・500hPa)と、日ごとの最高・最低気温の表があります。日ごとの表では、ECMWF と GFS を横に並べてくらべられます。「明日は朝のうちは風が弱く、昼から強まる」というような、時間の流れを見るのに使ってください。
雨雲と寒気の地図
ページの後ろには、山のまわりの雨・雪の計算と、上空約1500mの寒気(紫)、地上の風の流れを重ねた地図があります。赤いしるしが山の場所です。11月7日15時の例では、日本海から北陸・東北へ向かって、北西寄りの風が雨や雪の雲を運んでくる形の計算です。日付を押すと、その日の15時の図に切り替わります。上空の風を広い範囲で見たいときは、天気図ビューワーの 700hPa の図も使えます。
登る日までの調べ方
2週間前〜1週間前:寒気と風の流れをつかむ
山のページの2週間のカレンダーで、700hPa の気温と風の流れを見ます。紅葉のころから春までは、寒気が入るかどうかで山の様子がまるで変わります。初冠雪のころの山のことは、初冠雪の記事にまとめています。予定がまだ決まっていないときは、旅行・予定の日の天気で、日付を選んで、予報や平年の気温、晴れやすさを見ることもできます(山のページから、その県の「登山の日の天気」として開けます)。
数日前〜前日:気象庁の予報と、3時間ごとの計算
数日前からは、気象庁の週間予報と、山のページの3時間ごとの上空の気温と風を見ます。前日になったら、気象庁の府県天気予報と時系列情報で、雨・雷・強い風の見通しを確かめます。風の調べ方は風の予想のオススメの調べ方と使い方、レジャーごとの風の目安はこちらの記事も参考にしてください。
当日:雷と、山の発表
当日の朝は、気象庁の警報・注意報をもう一度。夏の山では、昼すぎから雷雲が発達することがよくあります。今どこで雷が落ちているかは、雷レーダーで見られます。山で雷にあったときの身の守り方は、正しい雷対策の記事にまとめています。
登る前に、これだけは確かめて
- 気象庁の予報・警報:気象庁の警報・注意報と、府県天気予報。当サイトの山のページにも、その地域の発表をそのまま載せています。
- 噴火警報・噴火警戒レベル:百名山には活火山も多くあります。登る前に気象庁の噴火警報・噴火警戒レベルを確かめてください。
- 山小屋・自治体の発表:登山道の通行止め、山小屋の営業期間、道路の冬季閉鎖などは、山小屋や自治体の発表で。
- 冬の装備:秋から春の高い山は、平地の冬よりずっと寒く、雪や凍結もあります。700hPa が氷点下の計算の日は、冬山の装備がいる日だと考えてください。
- 登山計画書:行き先と予定を、家族や登山届の窓口に伝えておきましょう。
まとめ:ふもとの予報と、上空の面の両方を見る
山の天気の調べ方を、もう一度まとめます。
- ふだんの天気予報は平地の予報。山の上は、ふもとより気温がずっと低く、風も強い。
- 山の高さの空気は、850hPa(約1500m)・700hPa(約3000m)・500hPa(約5500m)の上空の面で見るのが手がかり。
- 2週間前は計算で寒気と風の流れを、前日からは気象庁の予報と時系列情報で雨・雷・風を確かめる。
- 最後は、気象庁の警報、噴火警報、山小屋・自治体の発表で。
日本百名山の100座の、気象庁の予報と上空の気温・風の計算を2週間先までまとめた山の天気のページを、山行の計画にぜひ使ってみてください。ページの数字は、山にいちばん近い格子の計算で、山頂の値や当サイトの予報ではありません。山の天気は急に変わります。無理をせず、安全な山歩きを。
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