台風は右側が危険?出来方は?台風の全て

2026年10月29日

【2026年10月 全面更新】実際の台風で「右側の風が強い」ようすを、ECMWF の計算から描いた図で見られるようにしました。自分の町が台風の右側に入りそうかを調べる方法も足しています。

台風が近づくと、ニュースでよく聞く「台風の右側は危険です」という言葉。

でも、いざ自分の町のこととなると、「うちは右?左?」「左側なら安心なの?」と、分からないことだらけですよね。夜中に窓がガタガタ鳴りはじめてから考えても、もう遅い。だからこそ、台風が来る前に、ほんの少しだけ仕組みを知っておいてほしいんです。

台風

この記事では、

  • そもそも台風とは何か(強さ・大きさの言い方も)
  • 台風の右側が危険と言われる本当の理由と、その例外
  • 自分の町が台風の右側に入りそうかを調べる方法
  • 台風はどうやって生まれ、なぜ日本の近くで弱まるのか

を、順番にお話しします。

台風とは?

「台風=風が強い低気圧」。なんとなく、そんなイメージですよね。実は、台風にはきちんとした決まりがあります。気象庁の予報用語では、こう決められています。

「北西太平洋または南シナ海に存在する熱帯低気圧のうち、低気圧域内の最大風速がおよそ17m/s(34ノット、風力8)以上のもの」

ポイントは2つです。

  1. 最大風速がおよそ17m/s以上:34ノットは約17.2m/s。これより弱いものは「熱帯低気圧」と呼ばれ、台風にはなりません。
  2. 熱帯低気圧であること:ふだんの低気圧(温帯低気圧)は、北の冷たい空気と南の暖かい空気がぶつかってできます。熱帯低気圧は、あたたかい海から立ちのぼる水蒸気をエネルギーにして発達します。生まれ方そのものが違うんです。

台風情報でよく聞く「強い」「大型」といった言葉も、気象庁が決めています。

  • 強さ(最大風速):強い=33m/s以上、非常に強い=44m/s以上、猛烈な=54m/s以上
  • 大きさ(風速15m/s以上の強風域の半径):大型=500km以上、超大型=800km以上

「大型で非常に強い台風」と聞いたら、広い範囲で、しかも中心付近は猛烈に近い風が吹いている、という意味です。

台風は右側が危険?

天ちゃん

天ちゃん

台風の風は、右側の方が強いって聞いたけど本当?
kaku

kaku

だいたい当たってるかなぁ。例外もあるけど。
天ちゃん

天ちゃん

あってるなら、素直にそう言いなさいよ、理屈っぽい猫め!
kaku

kaku

ちゃんと説明するから許して!

結論から言うと、台風の「進む向きの右側」は、ほとんどの場合、風が強くなります。でも、必ずではありません。

昔から船乗りのあいだでは、台風の右側を「危険半円」、左側を「可航半円」(船で航海できる半円)と呼んできました。左側なら安全という意味ではなく、「右側よりは、まだ船を進めやすい」という意味です。

右側の風が強くなる理由

台風は、反時計回りに風が吹きこむ大きな渦です。渦だけを見れば、右も左も同じ強さの風のはず。ところが台風は、まわりの風に流されて動いています。

  • 右側:渦の風の向きと、台風が進む向きがそろう → 風が足し算になる
  • 左側:渦の風の向きと、台風が進む向きが逆になる → 風が引き算になる

たとえば、渦の風が30m/sで、台風が時速36km(秒速10m)で北へ進んでいるとします。ざっくり言えば、右側は30+10で40m/s近く、左側は30−10で20m/s近く。同じ台風なのに、右と左で倍ちかい差がつくこともあるんです。

台風の右側(危険半円)と左側(可航半円)の風のイメージ

日本に近づく台風の多くは、夏から秋にかけて、太平洋高気圧のへりを時計回りに吹く南よりの風に乗って北上してきます。この南風と台風の渦の南風が重なる右側(東側)で、風が強まるわけです。図の右上には、伊勢湾台風や室戸台風など、大きな被害を出した台風の右側と左側の風速を載せています。台風によって違いますが、右と左で10m/sほどの差があることが分かります。

実際の台風で見てみると

理屈だけでは実感がわかないので、2026年10月の台風第31号(インファ)で、ECMWF(ヨーロッパ中期予報センター)の計算を図にしてみました。

ECMWF の計算による台風第31号のまわりの風速。進む向きの右側(北側)の方が風の強い範囲が広い

この時刻の台風は西へ進む計算です。西へ進むときの「右側」は、北側になります。黄色(風速15m/s以上)の範囲は、南側よりも北側へ大きく広がっていて、最大の風速も、北側の約47m/sに対して南側は約40m/s。ちゃんと「進む向きの右側」の風が強くなっています。

ここで大事なのは、「右側」は地図の東側とはかぎらないということ。台風が北へ進むなら右は東、西へ進むなら右は北、北東へ進むなら右は南東です。台風の進む向きを見て、そこから右を考えてくださいね。

天気図で「風の強いところ」を見つける方法

少しくわしい人向けの話をします。台風を流す風は、いつも南風とはかぎりません。でも、地上の天気図を見れば、風の強いところは見つけられます。

決まりはひとつ。等圧線(気圧の同じところを結んだ線)が混んでいるところほど、風が強い。これは台風でも、ふだんの天気でも同じ、自然界の決まりです。台風と高気圧のあいだには、必ず等圧線が混むところができます。そこが、台風から離れているわりに風が強くなるところです。

台風が2つある天気図

この天気図では台風が2つありますが、右上の部分で等圧線が混んでいますね。逆に、2つの台風のちょうど真ん中は等圧線がほとんどありません。「右の台風の北風」と「左の台風の南風」がぶつかって打ち消しあい、台風にはさまれているのに風が弱い、という不思議なことが起きるんです。

強風域の形にも、右と左の差が出ている

気象庁の台風情報をよく見ると、強風域が「南東側 500km、北西側 300km」のように、方向によって違う大きさで発表されていることがあります。南の海でゆっくりしているうちは、東も西も同じくらい。北上して速度を上げるにつれて、右側の強風域が大きくなっていきます。気象庁の台風情報も、ちゃんとこの差を考えて作られているんです。

例外もある:左側でも油断しない

  • ゆっくり進む台風は、足し算・引き算の差が小さく、右と左の差もあまり出ません。そのかわり、同じ場所で長く風雨が続きます。
  • 雨は、右か左かよりも、湿った風が山にぶつかる場所で多くなります。左側でも、地形しだいで大雨になります。
  • 引き算になるとはいえ、もとの風がものすごく強いので、左側でも暴風になることはふつうにあります。
kaku

kaku

北へちゃんと進む台風なら、進む向きの右側の風が強い、というのが正確な言い方ですね!理屈っぽくてごめんなさい!

自分の町は台風の右側?左側?調べ方

結局いちばん知りたいのは、「うちの町は、台風の右側に入るの?」ですよね。これは、台風がどこを通るかで決まります。台風の中心が自分の町の西側を通れば、右側に入ります(北へ進む台風の場合)。

台風の通り道は、台風の進路予想をくらべるページで確かめられます。

台風の進路予想をくらべるページ:気象庁の予報円と ECMWF・GFS・AI などの計算を1枚の地図に重ねたところ

  1. 気象庁の予報円を見る:黒い線と円が気象庁の予報です。自分の町が円の東側にあれば、右側に入る可能性があります。
  2. 各国のモデルの線を見る:ECMWF(ヨーロッパ)・GFS(アメリカ)・AI のモデルなどの計算の線が、自分の町の東を通るか西を通るか。線が西側に集まっていれば、右側に入る計算が多いということです。
  3. 細い線の束を見る:ECMWF の51通りの計算(アンサンブル)が細い線で出ます。線が広がっているうちは、まだ東か西か決まっていません。

さらに、ECMWF・GFS の天気図ビューワーでは、2週間先までの等圧線の計算を地図で見られます。上に並んだボタンの「風速」を押すと、地上の風の強さが色で塗られるので、台風のどちら側で風が強くなりそうかが、ひと目で分かります。

台風はどうやって出来るの?

天ちゃん

天ちゃん

台風って、海の上に突然まるい雲ができて不思議よね。
kaku

kaku

よし、台風の出来方を説明しよう!

宇宙から見た台風の、くるりと巻いた雲。何度見てもきれいですよね。でもあの渦は、ふだんの低気圧とは、生まれ方からして違うんです。

はじまりは「偶然」

夏から秋の南の海は、どこも海水温が高く、たくさんの水蒸気が立ちのぼって雲をつくっています。そのなかで、たまたま周りより雲が多くでき、気圧が少し下がるところが生まれます。台風のはじまりは、じつはこんな偶然なんです。

気圧が下がると、まわりの空気がぐるぐる回りながら中心へ集まってきます。お風呂の栓を抜いたときにできる渦のようなイメージです(仕組みは少し違いますが)。

水蒸気が「燃料」になって、どんどん育つ

集まってきた空気は、水蒸気をたっぷりふくんでいます。この空気が中心付近で上昇すると、水蒸気が冷えて雲になります。

ここがポイントです。水が蒸発するとき(汗が乾くとき)は熱がうばわれますよね。その逆で、水蒸気が水(雲)に戻るときは、熱が出るんです。この熱で空気があたためられて軽くなり、気圧がさらに下がります。

気圧が下がる → 湿った空気が集まる → 雲ができて熱が出る → さらに気圧が下がる → もっと湿った空気が集まる……

このサイクルがぐるぐる回って、台風はどんどん成長していきます。燃料は、あたたかい海からわき出る水蒸気。海面の水温がおよそ26〜27℃以上の海の上で、台風は発達しやすくなります。

日本の近くで弱まるのは、なぜ?

日本に近づくと台風が弱まりやすいのは、燃料が減るからです。

  • 日本のまわりの海は、南の海ほど水温が高くないので、水蒸気の補給が減る
  • 陸に上がると、水蒸気の補給がほぼ止まり、地面との摩擦でも風が弱まる
  • 北の冷たい空気が入ってくると、「温帯低気圧」に変わっていく

ただし、「温帯低気圧に変わった」は「弱まった」という意味ではありません。冷たい空気と暖かい空気のぶつかりで、もう一度発達して、かえって風が強い範囲が広がることもあります。台風情報が「温帯低気圧」に変わっても、気象庁の情報が続いているあいだは油断しないでください。

まとめ:右か左かを知って、早めの準備を

  • 台風の進む向きの右側は、渦の風と進む速さが足し算になって、風が強くなりやすい
  • 「右」は地図の東とはかぎらない。台風の進む向きから考える
  • 左側でも暴風・大雨になることはある。ゆっくりの台風は長引く
  • 自分の町が右側に入りそうかは、台風の進路予想をくらべるページで、予報円とモデルの線の位置から考えられる
  • 風の強いところは、等圧線の混み具合で分かる → ECMWF・GFS の天気図ビューワー

台風が来る前の晩、「うちは右側に入りそうだから、雨戸を早めに閉めておこう」「植木鉢を中に入れておこう」。そんなふうに、少しでも先回りして動けたら、それだけで被害はぐっと減らせます。

モデルの計算は、あくまで早めに準備をするための目安です。避難や外出の判断は、かならず気象庁の台風情報と、お住まいの自治体の情報で行ってください。