熱中症の危険は気温だけではわからに!暑さ指数とは?計算法とリアルタイム確認方法
暑さ指数ってなに?
暑い日には熱中症の搬送者が増える。
それはそうなんですが、人体への影響を考える場合はもっと他の事も考えた方が精度が上がります。
日救急医会誌の資料によれば、気温が上がるほど、熱中症の患者数は増えていることがわかります。
ただ、気温だけでは相関がありません。
データをみると、直接的に変化してませんよね。
「気温と熱中症の患者数は関係性が一定じゃない」とも言えるでしょう。
理由はいくつか考えつきますよね?
まずは湿度です。
人は暑くなると汗をかきます。汗を蒸発させて体温を下げます。
汗が蒸発するかどうかは湿度に関係します。
熱中症の患者数は気温だけでなく、湿度も関係します。
また、建物の輻射熱も関係するといわれてもいます。
そういった、気温、湿度、輻射熱の3つを組み合わせて熱中症搬送数と相関のある指数を作ったのが
暑さ指数です。
正式名称は「湿球黒球温度」
英語で「Wet Bulb Globe Temperature」
英語の頭文字をとってWBGTとも言います。
環境省HPに掲載されているグラフですが、暑さ指数(WBGT)が高いほど、100万人あたりの熱中症患者数が増えていますね。
計算式については、詳細を後に説明しますが
(屋外) WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
となります。乾球温度は気温のことです。
ですが、湿球温度(濡らしたガーゼで蒸発させて計る気温)や黒球温度(体感温度と相関が良いとされる温度)はこのままでは計算しづらいので下の式で計算しています。
WBGT=0.735×気温+0.0374×湿度+0.00292×気温×湿度+7.619×全天日射量-4.557×全天日射量2-0.0572×平均風速-4.064
似たような指数に体感温度というものがあります。
体感温度の場合は、風速と湿度を加味した、温度。あくまでも感じる温度です。
更に、似たような指数で「不快指数」というものがあります。
不快指数=0.72×(気温+湿球温度)+40.6
これは、不快に感じる日との割合が多くなる指数です。体感温度と違って風速が入っていません。
不快指数70以上:やや不快
不快指数75以上:半数以上が不快に感じる
不快指数85以上:ほとんどの人が不快に感じる
蒸し暑さの指数で冷房設計に用いたのが最初と言われています。
似たような指数ですが、それぞれ目的があって使用されています。
そして、暑さ指数(WBGT)は熱中症の危険を数値化するための指数です。
暑さ指数(WBGT)の目安
熱中症の危険度を表す指数なので、当然目安があります。
環境省の熱中症予防情報サイトによれば、暑さ指数(WBGT)が28を超えると危険と書かれています。
当然、熱中症患者の発生数が増えるというエビデンスもあります。
暑さ指数(WBGT)28を超えると1日で、100万人あたり0.5~0.8人ぐらいの搬送数となります。
大都市の人口が数百万人であることを考えると一桁の搬送数となります。
30を超えると1日で、100万人あたり1~4人ぐらいの搬送数、31以上だと更に跳ね上げます。
夏に屋外でイベント等を計画する場合は参考にして、熱中症の対策に役立ててください。
暑さ指数の計算方法
環境省の熱中症予防情報サイトによると、暑さ指数(WBGT)は湿度の効果が7割となっています。
ちょっとこれは誤解を招きますね。
確かに屋外の場合
WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
なので湿球温度が7割ではあります。
ですが、湿球温度は温度と湿度から計算されますので、温度も関係します。
湿度70%はちょっと言い過ぎですね。
湿球温度の計算式は①湿度②気温③気圧で計算可能です。
計算はやや複雑なうえに、直接計算する式はなかなかインターネットに載っていません。
vaisaraという測器も制作しているメーカーのHPにある「湿度計算の計算式集」
にある式から導くと
湿球温度=(湿度×飽和蒸気圧+気圧×K×気温)/(飽和蒸気圧+気圧×K)
となりました。(私の計算ですが)
ここで、Kは乾湿計係数 0.000662/℃となり、湿度は100で割って割合に直した値となります。
また、飽和蒸気圧=A×10^(m×気温/気温+Tn)
となり、-20 ~ +50℃の範囲であれば
A:6.11 m:7.59 Tn:240.73
で誤差が0.1%以内という高精度の計算ができます。
ちょっと内容が難しくなりましたが、湿球温度の計算に気温が入っていることは分かってもらえたと思います。
湿度70%、気温35℃の場合、湿球温度は30℃
湿度70%、気温30℃の場合、湿球温度は25.6℃
同じ湿度70%でも、気温が5℃変われば湿球温度は4.4℃変化します。
湿度も語れば長くなりますが、一般的に使っている相対湿度の他に絶対湿度(≒水蒸気量)
があったりと様々ではありますが、気温の影響が1割以上であることだけは確かでしょう。
そうじゃないと、冬に湿度100%で熱中症の危険が・・・となってしまいますからね。
実際の暑さ指数(WBGT)は、環境省のWBGTのページで紹介されている↓の式で計算しています。
気温や湿度、平均風速など気象庁の予想している数値を使って、環境省が計算しています。
WBGT=0.735×気温+0.0374×湿度+0.00292×気温×湿度+7.619×全天日射量-4.557×全天日射量2-0.0572×平均風速-4.064
この式をみても、気温に0.735がかけてあるので気温の比率が高いことは分かりますね。
やはり、気温が高くなると熱中症の危険が高くなるということです。
また、風が吹くと暑さ指数が下がる、すなわち熱中症の危険リスクが下がることも上の式から分かります。
暑さ指数は使えるの?
暑さ指数(WBGT)の歴史は古く1954年(昭和29年)に熱中症ののリスクをは把握するためにアメリカで考案されました。その後、1982年にISOによって国際標準となっています。日本で公に使用されたのは1994年で日本体育協会がこの暑さ指数を使用して熱中症の(当時は日射病と一般的に呼ばれていましたが)事故予防を呼びかけました。
その後も国内の中央省庁では環境省が2006年のに国内の暑さ指数(WBGT)をインターネットで提供を開始し2021年に環境省と気象庁が共同で暑さ指数(WBGT)を基準とした「熱中症警戒アラート」を全国展開しました。
最初に掲載した図で、環境省のHPの資料ですが、暑さ指数(WBGT)と熱中症の搬送者数も相関があることがわかります。数値をもう少しいじればきれいな相関となりそうですが、歴史も深く、既に一般的に広まっているのでそういったことはしなかったのでしょう。
環境省だけでなく、日本生気象学会でも日常生活における熱中症予防指針に盛り込まれるなど、その有効性は広く認められています。
また、使い方としては暑さ指数(WBGT)が20以下の場合はあまり意味はないようで、単純に数値の大小で比較するというよりも「暑さ指数(WBGT)が21を超えているか」「暑さ指数(WBGT)が25を超えているか」という風にどのレベルにあるかを考えたほうが有効なようです。
暑さ指数を計算するための対応表
暑さ指数は
WBGT(℃) =0.7 × 湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 乾球温度
と紹介しましたが、湿球温度も黒球温度も簡単には分かりませんよね?
普通に計算しようと思ったら対応表を使うのが一番簡単です。
真夏日の定義は最高気温が30℃なので、湿度85%以上でWBGT31=危険となります。
また、猛暑日だと最高気温が35℃なので、湿度55%以上でWBGT31=危険となります。
対応表を見ていると、だいたい湿度5%で暑さ指数(WBGT)が1上昇、気温1℃で指数(WBGT)が1上昇
していますね。あくまでもだいたいですが。
対応表や、熱中症の注意点は環境省HPの熱中症に関する資料に掲載されています。
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません