気象予報士に独学で受験するための入門講座(大気の鉛直構造)

2019年9月4日

気象予報士に独学で受験するための入門ページを作りました

私はあたなの気象予報士試験の受験と合格を応援しています。

気象予報士の試験を受験しなくても、気象という、天気予報という形で生活に密着した自然科学を

学んぶあたなを応援するためにこのページを作りました。

気象予報士の試験の内容についてでテキストや勉強方法を紹介しています。

こういった、概要を説明してくれるページはあっても、具体的な内容を説明してくれるページは少ないので

思い切って立ち上げてみました。

気象予報士の勉強する前段階の勉強と思ってもらって構いません。

気象予報士の試験勉強の内容をちょっと雰囲気だけでも知りたい人はここのページを読むだけでその目的は達成できる。

そういうページを目指して作っています。

ドーン

地球の大気の鉛直構造(対流圏、成層圏、中間圏、圏界面)

まず、最初に大気の構造です。

多くのテキストが大気の構造から入ります。

なかには、地球だけではなく惑星の大気に触れているテキストもありますが、ここではそういう壮大な話は置いておきましょう。

気象予報士の試験への1歩として、地球の大気の構造はだいたい下の図のようになります。

この大気の中で起こることを理解度を問うのが気象予報士の試験です。

だから、この大気の名称と特徴は覚えておきましょう

こういう一つ一つの名称と特徴を覚えて理解することを積み重ねるのが気象予報士の試験勉強です。

大気の成層

まず、気象学の世界の常識の紹介です。

気象学の世界では、高さの話をするときに、メートル(m)やキロメートル(㎞)は好んでは使いません。

基本的に高さはhPa(ヘクトパスカル)で表す事が多いです。

hPaは気圧の単位ですが、大気は基本的に気圧と高度が1対1で対応します。

日によって違いますが、1000hPaは地上付近。

850hPaは1500メール付近。

上空の天気図なども高度5500m付近の天気図とは呼ばずに500hPaの天気図と呼びます。

この天気図の作成時にhPaという気圧面(等圧面)で天気図を作成することにメリットがあったため

気象の世界では高度はほとんどhPaで表現する風習ができました。

慣れですね。

脱線しましたが、一つ一つの特徴を見ていきましょう。

対流圏

その名の通り、対流が起こる大気の層の名前です。

対流はわかりますか?

縦方向のグルグルかき混ぜです。

横方向のグルグルかき混ぜは渦。

縦方向だと対流。

明日から、お風呂のお湯が縦にグルグルしていたら対流と呼んで慣れ親しみましょう。

味噌汁のお汁も縦方向にぐるぐる回転する対流をしていますね。

対流のイメージ

対流圏では、常にこういった対流が発生しています。

特に日中は太陽の光で地上や海上が暖められて対流が起こっています。

だいたい11㎞ぐらいまではこういった対流がよくおこるので対流圏と呼んでいます。

そして、対流圏の一番上が対流圏界面です。省略して圏界面ともいます。

対流圏は、地球の空気のおよそ80%を占める大気です。

積分したら分かりそうですが、その計算は置いておきましょう。

対流圏はあまりに広いので2つに分けることもあります。

地上から1㎞までは、地表や地形の影響が大きいので境界層と呼んだりもします。

境界?なにとの境界でしょうか?

地上や海上のことですね。

大気と地表の境界層です。

1㎞から11㎞ぐらいまでは自由大気と呼ばれます。

ほとんど地形の影響を受けませんが、それでも高い山の影響は受けたりします。

チベットなど高い山は5000mぐらいまでは天気図上でも影響が大きくなります。

日本付近や海上では1㎞ともなるとかなり自由な振る舞いをするので自由大気と呼んでいるのでしょう。

朝日

成層圏

成層圏は聞いたことがある人も多くないでしょうか?

11㎞から45㎞ぐらいまでが成層圏です。

成層とはそのまま、層に成っているという意味で

混ざりあわない という意味、言い換えると対流が発生しないという意味です。

対流圏が対流が発生する大気であるのに対して、成層圏は対流が発生しないでずーっと層状でいる大気という意味で名づけられました。

温度分布を見たらわかると思いますが、下の方が気温が低く、上空に行くほど気温が高い状態になっています。

下の方が重い(冷たい≒密度が高い)、上の方が軽い(暖かい≒密度が低い)というとても安定している状態なので

対流が発生しない層=成層 と名付けられたと考えられています。

大気の成層

密度の話をすれば、対流圏は上空の方が冷たくて、下の方が暖かいので対流が発生しそうです。

どうでしょう?

いい疑問だと思います。

 

 

 

答えは・・・

いろんな表現がありますが

一つ、数式や専門用語を取り除いて書いてみましょう。

軽いから上に行くというのは厳密ではありません。

密度が低いから上に行くというのが正確でしょう。

密度が高いと、低密度の空気より重力にひかれて下に行きます。

上にある空気は冷たくて密度が高いですが、それ以上に、上空にあることで空気が薄く密度が低いんです

温度による密度差を打ち消すぐらい、空気の薄さで密度が下がっているから対流が起きないんです。

逆に、空気の薄さを打ち消すぐらい、冷たくなると、対流を起こしてその冷たい空気を下に持っていきます。

下の空気が暖かい場合もそうです。

地表付近の空気が温まって密度が下がり、上空の空気の薄さと同じぐらいの密度まで下がればそこまで空気は上昇します。

そう、それが雲の発生、雨の発生です。

なにか、成層圏の話をしていたら雲の話になってしまいましたね。

物事は繋がっているので、つきつめると違う分野の結論が出てきたりします。

科学は面白いですね。

さて、脱線は終えましょう。

こういう、対流が起こりにくいのが成層圏です。

上空は空気が薄いうえに、暖かくて密度が下がっているんです。

2重の意味で対流が発生しにくいのも納得です。

成層圏の中のオゾン層

この成層圏の中にはオゾン層も含まれています。

オゾンというのは、酸素に紫外線を当てることで発生します。

普段は酸素原子2つが結びついていますが、太陽の紫外線の影響で酸素分子が1つ1つに分解されます。

その別れてしまった1つの酸素分子が、ほかの酸素原子とくっついてオゾンができます。

オゾン

オゾン自体が紫外線を吸収しますが、そもそもオゾンができる過程で紫外線を吸収しているんです。

しかし、オゾン自体は酸素分子ほど安定はしていません。

化学の言葉でいうと不安定な状態です。

そのため、近くに酸素原子がもう一つあれば、それと結合して酸素分子×2つになります。

これを繰り返しているのがオゾン層です。

環境破壊で減少していたオゾン層の最近

1980年代、フロンガスが世界中から放出されました。

当時はオゾン層を破壊するということなど知らずに世界中でフロンガスが使用され、そのまま大気に放出されました。

そして、そのフロンガスがオゾン層を破壊したというのは有名な話でしょうか。

ちなみに、そのオゾン層の破壊を発見したのは日本人で南極の調査隊の方だったそうです。

最近では環境問題といえば二酸化炭素の排出削減ですが、20年前はフロンガスが大きな問題でした。

脱フロンガスが訴えられ、法整備やメーカーの努力により新たなフロンガスの排出量はかなり減っています。

では、オゾン層の最新の状態はどうなっているのでしょうか。

オゾン層の観測は気象庁が行っています。

オゾンゾンデという、大きな気球に計測機器を設置して直接観測をしています。

その結果はこちらです

オゾン層の観測結果

詳しくは気象庁の環境オゾン層破壊の科学アセスメントに掲載されていますが、オゾン層が回復しつつあり、オゾンホールが縮小傾向(まだ存在するが)

であることは知っていたほうが良いでしょう。

中間圏、熱圏もありますが気象予報士の試験ではそれほど出てきません。

成層圏の上には中間圏、熱圏とあります。

まったく出題されない訳ではありませんが、頻出でもないのが中間圏、熱圏です。

中間圏、は対流圏と一緒で、上空に行くほど気温が下がります。

逆に、熱圏は成層圏と一緒で上空に行くほど気温が上がります。

熱圏は、気圧が非常に低い・・・というか真空にかなり近い状態です。

そのため、原子がイオンの状態で存在します。

イオン=電離ですね。

そのため、電離層とも呼ばれています。

電離層、聞いたことがありますか?

電波が反射する層ですね。

この電離層で反射した電波の影響で外国のラジオが夜に聞こえたりもします。

また、オーロラがみれるのもこの熱圏のイオンが一役買っています。

避けて通れない、高さと気圧

大気の鉛直構造で避けて通れない関門があります。

先ほど、高さと気圧と1対1で対応すると説明しました。

高さが決まれば、気圧がきまる、気圧が決まれば高さが決まるといった具合です。

さて、この話をする前に、気圧について話をしましょう。

知っている人はいいのですが、知らないと先に進めませんから。

気圧とは?

気圧は知ってますか?

気象予報士の試験を受けようかと考えるぐらいだから基本は知ってますよね?

気圧は、上空にある空気の重さの積算です。

あなたの頭の上にある空気を全部足したら、その重さが気圧です。

正確には、重さ(g:グラム)に重力加速度(g≒9.8)をかけて単位を力(N:ニュートン)にしたり

単位面積(1㎡あたり)の力にするなど、ちゃんとルールを守る必要はありますが、

概念的には頭の上にある空気の重さ・・・それが気圧です。

では、考えてください。

 

あなたの部屋。

天井と床

気圧の差ってありますか?

 

答えは・・・「ある」です。

わずかな量ですが、高さが違えば気圧の差はあります。

 

では、その気圧の差の正体は?

 

何でしょう?

 

気圧をは何か。

 

考えれば分かりますよね?

 

あなたの部屋の天井と床の気圧差の正体。

 

それは、あなたの部屋の空気の重さです。

 

このことが分かれば、次の話は簡単です。

静水圧平衡

静水圧平衡はとても大事な考え方です。

厳密には、実際の大気には、上下方向の加速度(力が)働いており、この式は成り立ちません。

しかし、かなり高い精度で成り立っている近似式なので、今でも数値予報モデルではこの近似をつかって計算を簡易的にすませているものもあります。

といいますが、その数値予報モデルがメインです。

それぐらい、大切な数式です。

考え方は先ほど部屋で例えたたとえ話と同じです。

静水圧平衡

dp = -ρg dz

これが静水圧平衡(静力学平衡)の式です。

式の本質は、言葉です。

そのため言葉でも言い換えることができます。

圧力差 ≒ (密度×重力加速度 ) ×高さの差  (の減った分)

空気の減った分なので式ではマイナスをつけています。

密度×重力加速度)は中の重さに対応します。厳密には、S(面積)が無いので単位面積の柱を考えてますね。

 

ともあれ、静水圧平衡の式

dp = -ρg dz

が導かれました。

簡単な式なので内容も式も両方頭に入れておいてください。

私が先生なら「ここ、テストに出るぞ~」と定番の言葉を言うところですね。

 

もう少しだけつっこんでジオポテンシャル高度へ

 

静水圧平衡の式

dp = -ρg dz

 

よくみると、変数が3つあります。

気圧:p

密度:ρ

高さ:Z

3つの変数と重力加速度g(≒9.8)という1つの定数です。

これでは式を解くのに困ります。

そこで、高校で習った気体の状態方程式の出番です。

pv=nRTというやつです。

気象学の世界では体積Vを使わず密度ρを使います。

ρ ∝ 1/V (同一質量ならρは体積に反比例)

という関係から

ρ=p/(RT)となります。ここでのRは定数ですが、最初のRにいくつか係数をかけていますので

数字にすると違う値ですが、定数という意味でどちらもRと書かれます。

この式を、静水圧平衡の式に当てはめたのち、温度Tを実測値や関係式を使い定数かすると

変数が一つ減り式を解くことができます。

高度と気圧の関係式です。

その式から導かれた高度をギオポテンシャル高度といいます。

計算自体は積分が入ってきますのでちょっと省略しますがそこまで難しい計算ではないので

高3の積分を覚えているなら計算してみてください。

Z=-(RT/g)ln(p0/p)となれば正解です。

ここで、Tについては近似的な値をいれて定数かしたものとしてください。

 

この、気圧と高度を結び付け式は気象の世界の根本を支える式でした。

空と雲

高層観測のラジオゾンデを支えるジオポテンシャル高度

高層観測って知ってますか?

初めて知ったとき私は

「いまだにそんなことしてるの?」

と驚きました。

大きな風船に計測機器を結び付けて上空の大気の状態を観測をしています。

日本時間で9時と21時の2階です。

これは00UTCと12CTCという国際標準時で区切りのいい時間に世界で一斉に行っている作業です。

WMOという世界気象機関で決められた観測です。

そのため、WMO加盟国ならどこでもやっています。

上空の大気について、いまではある程度は計算で分かりますが、それでも、多少のずれはあります。

そのずれを、補正するためにラジオゾンデという大きな風船に計測機器を結び付けて観測をしています。

直接大気をはかるので大気の直接観測と呼ばれています。

対義語はリモートセンシング観測といって、過程や物理法則に基づいた大気の観測になります。

リモートセンシング技術も精度はある程度向上していますが、直接観測に比べれば低くなります。

そもそも、リモートセンシング技術も、正解がなければ、図っても正しいか分かりません。

リモートセンシングで計測した観測値が正しいか、というのを知るためにもラジオゾンデによる直接観測が必要になります。

その、ラジオゾンデですが計測している項目は

①気温

②湿度

③風

となります。

以前は気圧を計測し、先ほどの気圧と高度の計算式から計算して高度を割り出していました。

最近ではGPSも発達してきたので、位置(高さ)についてはGPSで計測している所が増えているようです。

高層観測につて、気温と湿度はセンサーが計測していますが、風については、風向風速計は設置されていません。

風については、流された方向に風が吹いているということで、位置情報から割り出されているようです。

言われてみれば納得ですね。

この、ぞんでという計測方法、毎日行われているのはわりと有名です。

そして、制度も高いため、気象の世界では重宝されています。

アメリカは台風の構造調査のために台風の真ん中にゾンデを落下させて観測をしていた頃もあったようです。

落としながら計測するのでドロップゾンデと呼ばれています。

このゾンデ、日本ではつくばや南極基地の限られたところでしか行っていませんが、オゾン層の観測まで行っている地点があります。オゾンを観測するのでオゾンゾンデとそのままの名称で呼ばれています。